友人の父親が亡くなり、遺産の相続手続きが始まりました。遺産は築40年以上の木造住宅と、3つの銀行口座に1500万円ほどの預金でした。友人の父親は生涯を通じて質素な生活を送り、高価なブランド品や骨董品などは持っていませんでした。そのため、友人と母親は相続について特別な期待を持っていませんでした。
友人と母親は淡々と遺品整理を始めました。父親の衣類、本、写真アルバム、工具など、家には彼の足跡が詰まっていました。友人は父親の古い工具を手に取り、思い出深い瞬間を振り返りました。幼い頃、父親は彼に木工工作を教え、一緒にプロジェクトを完成させるたびに、絆が深まっていきました。
母親は古びた本棚に近づき、父親の愛読書を整理しました。古典文学から科学書まで、その本棚は知識の宝庫でした。友人の母親は本のページをめくり、彼女と父親が過ごした晩餐のテーブルでの議論や本の話題について思い出しました。
遺品整理を進める中で、友人と母親は父親の思い出に包まれていくことに気づきました。彼らは笑顔で父親の写真を見つめ、共感と感謝の気持ちを分かち合いました。高額なブランド品や贅沢な骨董品はなかったけれど、父親は家族への愛に満ちた人でした。
しかし、ある日、友人は亡父の日記の中にとんでもない発見をします。
亡父はパソコンで株式と仮想通貨の運用をしており、その成功は驚異的なものでした。亡くなる直前の評価額は合計3億円を超えていたのです。
さっそく、友人は亡父のノートパソコンを探しました。パソコンの電源を入れ、株式や仮想通貨の詳細を知りたいと思いましたが、パソコンにはパスワードがかかっていました。友人は心当たりのあるパスワードをいくつか試しましたが、解錠はできませんでした。そこで、友人はどうすればいいのかについてネットで検索を始めました。
ネットでの検索中、友人は「デジタル・フォレンジック」という技術の存在を知りました。
「フォレンジック」とは「鑑識」の意味。
「デジタル・フォレンジック」は、電子デバイスやデータの復元、解析、調査に特化した専門技術です。主に刑事捜査、証拠収集、データリカバリ、サイバーセキュリティ、民事訴訟などの分野で広く利用されています。
具体的には、壊れたパソコンからデータを取り出したり、パスワードを解錠したりできます。
民間人に関係があるのは、例えばこのケースのような「デジタル遺産」です。
デジタル・フォレンジックのサービスを提供している会社を探すうちに、友人はMJリサーチという探偵社を見つけました。
この会社は相続関係の調査も得意らしいので、ちょうどいいと連絡を取ってみることにしたそうです。
なかなか珍しい話なので、私も友人の次の報告を楽しみにしているところです。